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夏の宿根草ガーデン [ガーデン]

春から初夏にかけての宿根草ガーデンは期待に溢れていた。球根と競い合うように美しく花々が咲き乱れ、どの品種にしようか迷ったものだ。それなのに、クレマチスやバラが咲き、そして紫陽花へと花が移り変わる頃、宿根草ガーデンが色あせてくる。これはどうした事だろう。

あの輝きはどこへ行ってしまったのだろうか。フウロソウにガウラ、オダマキ、ケマンソウ、オステオスペルマム。バーバスカムも天を差していた。背の高さならジギタリスにデルフィニウム、そしてルピナス。皆色とりどりにふわふわと、あんなに煌めいていたではないか。カラースキーム通りに咲き乱れるボーダー。思い描いた理想の庭が全てそこにあったと言うのに。ああ、春にあれほどきらめいていた、あの憧れのイングリッシュ・ガーデンの宿根草ボーダーはいずこに消えてしまったのだろう。

あれは一時の夢だったのだ。ここは日本。しかもガーデナーが住むのは蒸し暑い関西。6月からのサウナのような暑さが地表からも立ち昇り、夏至を過ぎた日差しでどんな青々とした緑さえも黄色くあせてしまう。たっぷりと天からの雨を浴びた宿根草は恐ろしいほど伸び切って、花は咲いたと思ったらすぐに散ってしまう。対照的な光と影。光はより強く眩しく草花達を痛めつけ、枝をくねらし、影はより陰鬱に、じめじめと明るい花色ではなく陰気なキノコをガーデナーに与える。

*********
ガーデニングを始めて2年目の夏を迎えるガーデナーは、日本の夏に大いなる壁を感じ始めていた。どんなに雑誌が英国風ガーデンと銘打ち、魅惑的な写真を載せたってもう騙されやしないのだ。そんなのは全部虚構だ。しかも春の光景ではないか。夏のガーデナーに与えられたのは、強い日差しと蒸し暑さ。いつ上がるとも知れない雨空に薮蚊の大群。そして花色が褪せて、草に独占された、疲れ果てた花壇なのだ。

何もガーデナーの「花園」に限った事ではない。例の草津市立水生植物公園「みずの森」でも同じだった。一ヶ月前に行った初夏の宿根草ガーデンはそれはそれは美しかった。しかし今は花色は少なく、背丈はぼうぼうと伸び切って、無秩序に枝をあちこちに広げ、葉は黄ばんでいる。木陰のない花壇は見る人もいない。雑誌にはこの疲れ果てた宿根草ガーデンの写真は皆無だ。写真にはないけれど、フウロソウなど足元を覆っていた可愛い花達は、もはや「可愛く」は見えない。雑草のように繁茂し、行儀悪く石段からはみ出していた。(写真の大きい方が7/16、小さい方は6/11に撮影)


分かってはいたのだ。イギリスと日本の天候の違いなど。でも実際目の当たりにする事はなかった。

イギリス人の恩師は日本の気候について、こう話した事がある。「イギリスだとつるバラが伸びるのに4〜5年かかるところが、日本だと2年で伸びちゃうからね。肥料だなんだって言うけど、結局は温度なんだなと思ったね。」また恩師の友人のガーデナーが、日本の庭の手入れをしていて、イギリスの感覚で次回手入れに行ったら、あまりの繁茂ぶりに唖然としたと言う逸話も明かしてくれた。

例の宝塚のSeasonsでも、植えて3年目が一番美しいが、日本では皆育ちすぎてしまうので、4、5年目の管理はイギリスと違った切り戻し、植え替えなどの管理が必要になると、本物のガーデナーさんはおっしゃっていた。

そんなこんなで、いわゆる典型的なイングリッシュ・ガーデンの植栽をあきらめたガーデナーは、近頃「花園」に合う日陰に強い低木や山野草を物色している。でも鬱蒼としたシェードガーデンみたいにもしたくない。「花園」には、去年の春にイングリッシュ・ガーデンを夢見て植え付けてしまった品種も、まだ生き延びている。いっその事、一からやり替えられればいいのだが、そうもいかない。

植栽の仕方も好きな品種も去年と今年とでは全く趣味が異なってきた。途中から入れ替えているので、だんだん統一感もなくなっている。どんなに成長の早い日本の植物達も、さすがにガーデナーの気変わりの早さにはついてはいけないようだ。

****おまけ:「みずの森」で見つけたお気に入り達****
でも夏に強い宿根草をうまく使えば、爽やかさは演出できますね。以前は目立たなかったけど、夏には綺麗だった、また別の植栽コーナー。広い土地があればこうやって使い分けられるけどなあ(タメイキ)。

欲しくなった品種もついでに。この斑入りのフロックスが欲しい!木陰に咲いていたサクユリも美しかった。

****追記****
「みずの森」のお花達や睡蓮もphotoに追加しました。よかったら遊びに来て下さい。
http://pht.so-net.ne.jp/photo/hanahana-life


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春分

夏はねぇ。何もかもがこげて茶色くなってしまいますねぇ。
お盆で帰省している間に何もかもがだめになるし。
ルリタマアザミがきれいですね。クレマチスの種のもしゃもしゃもいいですね。
フロックスの斑入り。これまで斑入りだと育てるのは大変でしょうね。
やっぱりとてもイングリッシュな庭ですね。
by 春分 (2006-07-26 11:56) 

チョコまる

確かに夏の庭は伸び放題で雑然とした感じになりますね。
気に入った宿根草があっても暑さに弱かったりするとあきらめてしまいます。
日本の気候だと、一年草をせっせと植え替えるしかないのでしょうか。
by チョコまる (2006-07-26 19:12) 

アッキー

ローマは1日にしてならず
人の心も移ろいゆくもの
失敗は成功の元 
(^_^)V
by アッキー (2006-07-26 19:25) 

Jackな気分

せりさん
初めてコメントいたします。
本当に日本の気候って草花には過酷です。
イギリスと日本では、光の波長さえ違うのだそうですね。
オレンジと青ほどの違いがあるのだそうです。
私の住んでいる北海道でさえ、夏にはボウボウになるんですから…。

確か、せりさんの恩師はポールさんですよね?
実は数年前まで、長年東京に暮らしていましたので、
こちらに来る前に、私もポールさんに1年半ほど教えていただきました。
三鷹のガーデンルームズや八ヶ岳にも数回伺いましたよ。
懐かしいです!
私も北海道で…ぼちぼち庭造っています。
写真のテキセンシス綺麗ですね~。
では、またお邪魔します。
by Jackな気分 (2006-07-26 20:08) 

いむら@fintopo

夏の庭って、けっこうやっかいですね。庭づくりとしては、冬以上にやりにくい季節だと、私もだんだんとわかってきました。
確かに、夏は、どこでもだらけたような花壇が多いですね。
夏の庭で紹介されるというと、南国の植物を使った庭でしょうか。
確かに夏はすばらしいけど、冬に困るからなぁ。
by いむら@fintopo (2006-07-26 20:14) 

フク

日本の夏、悩まれてます?楽しんでます?
ほかのところからやってきた植物たちを適応させていつまでも綺麗にしておくのは大変ですよね。
by フク (2006-07-26 23:42) 

achami

栃木のイングリッシュガーデンも、本場の方が植え付けをしたお庭でしたが、気候の違いで咲き方が、計画通りに行かないこともあったそうです。
by achami (2006-07-27 01:34) 

ビアンカ

植えたい植物と植えれる植物は違いますね…。
ただいま初めての夏に向かって植物の適性テスト期間中でもあります。
だめになった鉢もすでに少々(#゚∇゚#)。
あと、ベランダと違って虫の被害が厳しいです~。
by ビアンカ (2006-07-27 11:24) 

せり

>皆様へ、いつもご訪問&コメント有り難うございます。今回はいつもにもまして、まとまりがない記事になりましたが、読んで頂き感謝します。本当に夏の庭は悩みが多いです。

*春分さんへ
やはりお庭がこげちゃいますか。ここは英国風な植栽コーナーですが、初夏を過ぎると疲れて見えてしまいますね。見てる方も暑いですしね^ ^私もクレマチスが終わった後のもしゃもしゃが好きです。斑入りは半日陰だと成長が遅くていいかなと思っているのですが、そんな事は関係なく単に好きなんですよ。

*チョコまるさんへ
そうなんですよね。耐寒性はあっても耐暑性のない宿根草って、結構ありますものね。かと言って、一年草ばかり育てるのも大変だし、私の場合花期が長過ぎて飽きてしまうのです。うまく低木やグラスと組み合わせたり、球根を使えればいいんでしょうね。しばらく悩みそうです。ハブランサスはなかなかいいと思いますよ^ ^

*アッキーさんへ
見識あるお言葉有り難うございます。そうですよね。ぼちぼち楽しく悩みながら、やっていく事にします。やってみなければわかりませんしね。どんどん植えてみます?!^ ^;

*Jackな気分さんへ
初めまして、ようこそ!早速ブログにもお邪魔してしまいました^ ^イギリスの花って青さが違うなと思っていたら、気温だけではなくそう言う事だったのですね。北海道のお庭を拝見しましたが、広すぎて庭じゃないみたいでしたよ@ @八ヶ岳にも行かれたなんて羨ましいですね。私のブログはポールさんの教えを忘れないように、習った事を一杯書き留めています。間違っていたら、またご指摘下さいね。よろしくお願いします。
by せり (2006-07-27 15:32) 

せり

*いむらさんへ
南国の植物は冬は温室が要りますし、地植えにできないですね。あまり夏の庭って、ちゃんと紹介されていないです。今回「みずの森」に行って、何故だかよくわかりました。シーズンズのようにウォーターガーデンがないとダメなんでしょうか??夏はやはり緑一色にすべきかどうか、なかなか悩ましいです^ ^;

*フクさんへ
どっちもです^ ^;夏には夏の景色があって楽しいのですが、庭となると悩ましいです。日本の植物でも、元は山に住んでいる子達ですから、暖地に適応させるのは大変ですね。フクさんの様に、水生植物達をうまく使えないかと楽しく悩んでいます。睡蓮、楽しみですね^ ^

*achamiさんへ
例のお庭は栃木でしたか。失礼しました^ ^;日本には日本にあった植栽の仕方があるんだろうなと思いながら、ただ今模索中です。育てやすさを追求すると、やはり里山の風景の様になるんでしょうか?広い土地が欲しいですね。

*ビアンカさんへ
おっしゃる通りです!無事夏を越して生き残ったものを、どうやって生かしていくかでしょうね。ダメになったものは、また次の実験植物と入れ替えてと。やはり時間がかかりますね。だから楽しいのかもしれません。虫さんの被害も、どれぐらいまで我慢できるかですね。例の「花園」は無農薬栽培を目指してます(つまり放ったらかし?!)。うまく生態系のバランスがとれるまで、ひたすら我慢です。

*ミニミーさんへ いつもnice!有り難うございます!
by せり (2006-07-27 15:47) 

ハイマン

日本はバラの成長が早いんですね。
初めて知りました。 
近所のバラの名所公園が病気が蔓延して壊滅状態だそうです。
早く復活できるといいな~
by ハイマン (2006-07-27 19:43) 

こももにゃん

夏はね~、なかなか難しいですよね。。。
日本は夏の暑さに加えて湿気も多いですしね、そうなるとやっぱり植えるものも限られてきてしまうし、ていうか日本にもともとある品種を植えればいいんでしょうけど、でもいろいろ植えたいしね(^^;
ガーデニングは試行錯誤の連続ですね~。でもまたそれも楽しかったりしてね。
by こももにゃん (2006-07-28 00:30) 

せり

>ハイマンさんへ
同じ植物ばかり集めると、どうしても病虫害がひどくなってしまうでしょうね。バランスのとれた植栽だと、壊滅状態まではいかないと思います。バラは基本的に生命力の強い木なので、葉が落ちたとしても、翌年花は咲くと思います。綺麗かどうかは別にして、、、^ ^;お返事遅くなりすみません。また遊びに行きますね。

>こももにゃんさんへ
やはり夏はガーデナー達が頭を悩ます季節なんですね。皆さんも悩んでいるので、なんかホッとしました^ ^日本原産でも、もともと山に咲いているので、暖地で育てるのが難しいですよね。手間を考えると、やはり日本庭園みたいに、木が中心になってしまうのでしょうが、あえて草花を育ててみたいなあと思います。コメント有り難うございました^ ^
by せり (2006-08-03 20:30) 

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