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秘密の山庭 [吉野の山庭]

連休第六日目と七日目は、山に行く事になった。今回の目的地は奈良県吉野郡。この吉野の里に、祖母が随分昔に買った小さな山荘と庭がある。親戚のほとんどが、大阪で暮らしているガーデナーにはいわゆる「田舎」がない。ガーデナーは物心がついた時から、級友達が休みの度に帰っていく「田舎」に対する憧れが異様な程強かった。

祖母が晩年に永住する事を夢見たこの山荘は、親戚の子供達にとっての格好の「田舎」であった。ガーデナーは子供の頃に、この地で、ワラビやゼンマイを取り、川で泳ぎ、虫を追いかけ、木に登り、「田舎」を満喫していた。

通常なら車で2時間ほどだが、2時間半はかかった。しかし前日の宝塚の渋滞を思えば、とてもスムーズだ。山の天気は悪い事が多かったのだが、今回は気持ちよく晴れている。山道を車が上がる度に、シャガの群生に出会う。ここのシャガは都会と違って、生き生きとして、野生的な荒々しさまで感じる。

昼間は、予想していたよりも暑いぐらいだ。先に来ていた親戚との再会を果たす間もなく、早速南側の小さな花壇に向かう。そこでは昨秋植えたチューリップの球根達が、ガーデナーを迎えてくれた。ベランダでは会えなかったアンジェリケも綺麗に咲いている。誰も手入れをしないこの地で、なんて元気なんだろうと感心し、自然の力に感謝する。
アンジェリケ

春に山に来たのは何年ぶりだろうか。ガーデニングに目覚めてから、改めて周りを見渡すと、本当に景色が違って見える。玄関前にそそりたつ崖にはシャガ、タチツボスミレ、ユキノシタ、ササユリがあり、足元にはムラサキケマンやキンポウゲがバランスよく咲き乱れている。この植栽は天才的だ。この自然こそが、ガーデナーの手本であり、師匠である。
シャガとタチツボスミレ(←スミレの品種はくんぺいださんに教えて頂きました。有り難うございます。)

お昼を食べてから、散策に出る。祖母の友人の畑があった所までが、いつもの散策路だ。今は人も車もほとんど通らない。近所の人が山菜摘みに来るぐらいだろう。もう自分たちの庭の延長のように、ガーデナー達も歩く。ショウジョウバカマはどうだろうか。その前にも色々な花達に出会う。皆生き生きとしていて、タンポポも大きい。妹や従姉妹はワラビを摘みながら、ガーデナーと相棒はカメラを向けながら、ゆるゆると散歩する。

(上段)ワラビとワラビを取るガーデナーの妹(下段)カンサイタンポポと野イチゴに止まるチョウチョ

秋も素晴らしかったが、春の景色は本当にのどかで、暖かい。澄んだウグイスの歌声が、初々しく木々の間に響く。スミレやチゴユリが群生している。皆小さいので、ぼんやり歩いていると全く気づかない。ただこんな風に複数の目で、山道を見ていると、誰かが花に気づく。ただ残念ながら、ショウジョウバカマの群落は花を終えたばかりだった。
チゴユリ、花は1~1.5cmぐらい
咲き終わったショウジョウバカマ

久しぶりに山の境内まで登る。上に行っても、特に何もなかったと思うが、その途中にシュンランが咲いているという叔母の怪情報があった。子供の頃に登ったが、その時は階段もあり、もう少し楽だった気がする。登り始めて、あまりの急勾配に少し後悔する。妹や従姉妹と励まし合いながら、なんとか辿りついた。昔の記憶を辿るがこんな所だっけ?と疑問しかわいてこない。登ってきた道とは反対側に、木を切り出すための車道が通っていた。多分来た道は、もう誰も使っていないのだろう。

(左から)境内、休憩時に見上げた空、妹と従姉妹

少し休憩し、元来た道を戻る。これが怖い。昔は視点が低かったから、何とも思わなかったんだろうか。膝や足があちこち痛いと不平をこぼしながら、枯れ枝を支えにして、ようやく下まで降りた。シュンランを見るどころではなかった。

(左から)まだ咲いていた山桜、山道を下ると見える近所の民家

帰って、ご近所からの頂き物に舌鼓を打ちながら、談笑する。ガーデナーはふと思い出したように、持ってきたラベンダーの実生苗を、チューリップの隣に植栽する。草刈りをするご近所さんに気づいてもらうよう、叔母に手伝ってもらい、植栽した周りを石で囲む。

北側の花壇に、祖母が植えた紫陽花がある。昨秋に思い切り剪定したが、もうこんなに伸びている。後ろの椿の剪定は、前日に妹がしてしまったようだ。近く改装工事も入るので、花壇の樹木もどうなるかわからない。花壇にあるシャガの一部は、持ち帰る事にした。

(左から)南側のチューリップ花壇、北側の花壇にある紫陽花

そうこうしている内に夕日が傾く。そう言えば、ここの所ゆっくり夕日が沈むのを眺める事はなかった。山の夕焼けは格別だ。相棒と下の道に降りて、写真を撮りながら堪能する。

叔母特製のおでんに感激しながら、夕食を終える。よもやま話をするうち、誰かが星が見えたと告げる。わらわらと皆夜空を眺めに外にでる。もうすっかり肌寒い。雲があるとは言え、なかなかの星空だ。思えば天の川を初めて見たのも、この吉野の里だった。今はもう北斗七星ぐらいしか、星座はわからない。明日も晴れそうだ。ネオンも電灯も何もない、真っ暗な山の夜は静かに更けていった。


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チョコまる

おやおや、そんなところにも「秘密の花園」を隠していたんですね。
私の田舎は海でしたから、田舎といえば砂浜と風除けの松林のイメージです。
山荘があるというのは、いいですね。うらやましいです。
by チョコまる (2006-05-06 22:12) 

こんばんは。吉野、まだ一度もいったことがありませんからあこがれです。特に春、桜の季節・・・一度は行こう!!!春の山の様子・・せりさんの上手なレポートに山を歩いている気分を味わうことができました。星空。。そう彗星がみえるそうですね、でも今夜は嵐かな・・・山の空気をいっぱい吸って帰ってくださいね。
by (2006-05-06 23:10) 

うらやましいです。。すてきな山荘!!
私も田舎がないので、夏休み等はいつも寂しかったものです。
自然のお花たちは素敵ですね☆
by (2006-05-06 23:21) 

絵瑠

素敵な場所に素敵な隠れ家がお有りなのですね。
羨ましいくらいです。夕焼けが美しいですね。
by 絵瑠 (2006-05-06 23:52) 

ごまかん

秘密の山庭もお持ちだったとは~羨ましい^^
自然こそが、ガーデナーの手本であり、師匠である~同感です!!
by ごまかん (2006-05-07 00:21) 

アンジェラス

吉野は、かれこれ四半世紀前に行ったきりです。
最近は、世界遺産で良くTVで取り上げられていますね!
夕日がとても綺麗ですね!!!
by アンジェラス (2006-05-07 00:24) 

アッキー

吉野の山は良さそうですね
もっと探検すればいろんな野草に出会えそうです
ここをせりさんの庭にしましょう!
by アッキー (2006-05-07 00:46) 

せり

>皆様へ、ご訪問&コメント有り難うございます。「山荘」と言えば聞こえはいいですが、ただの狭くて古い平屋です。過疎化の進む、何もないひなびた所ですが、周辺一帯が「庭」のようです。皆さんが、とても素敵な所を想像されているようで、お恥ずかしい限りです。

*チョコまるさんへ
例の「花園」ほど頻繁に通える所じゃないのですが、適当に余った球根や種を撒いています。花時に行けるとも限らないですが、今回はチューリップに会えてよかったです。海の「田舎」もいいですね。夏休みに帰ると最高でしょうね。

*しゅうさんへ
吉野にはもっと有名で美しい名所がたくさんありますから、きっとしゅうさん好みの場所があると思います。私の行った所は地図でもよくわからない、何にもないただの山です。まだ行った事はありませんが、上の方に大台ケ原という名所があり、星が大変美しく見えるそうです。ただし雨も多いらしいです。短い間ですが、森林浴は満喫できました。

*ゆっちょすさんへ
休みはやっぱり田舎がないと寂しい思いをしますね。絵日記に書く事がないし(苦笑)。田舎のお花達は、皆生き生きとしています。小さな頃にこういう自然に触れておくのは大切だなと、大人になって思います。お子様が歩けるようになったら、是非どこかの里山に散策にいらして下さい。

*絵瑠さんへ
絵瑠さんには、素敵なお庭をすぐ近くにお持ちなので羨ましいです。私はここまで行かないと、なかなか素敵な植物達に出会えませんから。夕焼けも今回は綺麗に見えました。もう少しゆっくりしてみたかったです。でもベランダの子達が心配で、、、^ ^;

*ゴマフさんへ
本当に誰が植えたのかと思うほど素敵なので、いつも山道を見て感心しています。ただたまにしか行けないのが残念です。いつもゴマフさんとカン太さんに、素敵なお散歩道を紹介して頂いている御陰で、今回は素敵なお花達を発見する事ができました。チゴユリは今まで見逃していました。有り難うございます。また勉強しに行きますね。

*アンジェラスさんへ
世界遺産の所はね、綺麗だと思いますよ。私の行った所は観光地ではない、ただの「田舎」です。周りに何もないので、食料や必需品は皆持っていかないと飢え死にします(苦笑)。夕日は綺麗に見えました。たまにゆっくり眺めるといいものですね。

*アッキーさんへ
今度アッキーさんを招いて、解説して頂きたいぐらいです。アッキーさんのブログで教えて頂いた事が、今回本当に役立ちました。家の前はムラサキケマンさんだらけでした。今まで一体何を見ていたんでしょうね^ ^;多分もっと見逃している野草があるはずです。また勉強しに行きます。そうですね。ここを「庭」と言う事にしておきましょう^ ^v
by せり (2006-05-07 08:51) 

いむら@fintopo

こんな素敵な場所に行ってたんですね。
「山にこもる」という魅惑的な書置きが気になっていたんです。
不便な場所のようなので、まさに「こもる」なんでしょうね。

自然の力だけじゃなく、人の手が入ることでできた里山の風景は、すべてが「庭」というのも間違いじゃないようです。別に有名な観光地でなくても、それだけで「いいところ」だと思います。
by いむら@fintopo (2006-05-07 09:50) 

手のはいった庭と自然の広大な庭いっぺんに手に入って
素晴らしいですね! また良い思い出作りになったのでは。
by (2006-05-07 10:25) 

でも、気持ちよかったでしょうね。
最後から2枚目、素晴らしい写真ですね。v^^;
by (2006-05-07 13:56) 

せり

>皆様へ、ご訪問&コメント有り難うございます。

*いむらさんへ
ついそんな言い方をしてしまいましたね。さすが、いむらさん、鋭いご指摘です。本当に不便な所なんです。おっしゃる通り、もう全体が大きな「庭」ですね。昔は草がぼうぼうと茂ってるなあとしか思わなかったのが、ようやく、そういう視点で見られるようになりました。

*g_gさんへ
大人になって、また違った視点で楽しめる大きな「庭」ですね。これもg_gさんのブログで、勉強させて頂いている御陰です。散策する時は、目を皿のようにして見る習慣がつきました。まだまだ葉や芽だけでは、何の植物かわかりませんし、咲いていても品種がわかりません。g_gさんの境地には全く及びませんが、ぼちぼち覚えて行きたいです。

*こうちゃんさんへ
はい、森林浴を満喫してきました。夕焼けは初めて撮ってみました。実際に見ている印象とまたひと味違って面白いです。実際に見る方が、何倍も素敵なんですけどね^ ^;山に来ると、雄大な景色も撮ってみたくなりました。
by せり (2006-05-07 19:08) 

くんぺいだ

せりさん、こんにちは。
吉野、最近行ってませんが、山草好きには山荘があるのは良いですね。
シャガとスミレとある画像のスミレはタチツボスミレだと思います。スミレのことは以下のホームページなどが詳しいと思います。
http://www.io-net.com/violet/index.html
http://niko.blog2.fc2.com/blog-date-20060325.html
by くんぺいだ (2006-05-08 12:24) 

せり

>くんぺいださんへ
品種名だけでなく、参考ホームページまで教えて頂き有り難うございました。まだまだ修行が足りないので、スミレの品種の見分けがついていません。タチツボスミレに似てるなぐらいの認識で、記事に書く自信がありませんでした。厚かましいお願いを聞いて頂き、本当に有り難うございました。m(_ _)m
by せり (2006-05-08 16:52) 

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