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原点回帰 [Seasons]

お転婆サーヤの一件もあり、頭が一杯になったガーデナーは、これからの植栽計画を考え直す上で、何か拠り所が欲しくなった。本ではなく、現物を見たい。と言う事で、久々に恩師ポールさんのお庭、かつての学び舎である宝塚のSeasonsに里帰りする事にした。

 

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昨年は引っ越しもあって、あまり立ち寄れていなかったが、今年は季節毎の植栽の参考にしようと、張り切って年間パスを購入する。

 

今年5周年を迎える庭は更に充実していた。まだ咲いている花は球根が中心で、人はまだまばらだった。だが一歩足を踏み入れると、今まで嗅いだ事のない芳香が漂っている。ふと見ると順路すぐのウッドランドの一角が開けていた。新しく植栽をし直したらしく、茶色い土が剥き出しだった。真新しい黄色のカーペット。それこそが香りの発生源だった。見た瞬間、ガーデナーの球根リストに新たな名前が付け加わった。

 

(→小さいが芳香が素晴らしい、スイセン・ジョンキル)

 

 

 

 

 

 

 

 

 春は週代わりで主役が変わっていく。前に来た時と時期がずれているし、新たに植栽されたものもあって、やっぱり新鮮である。山野草コレクションも充実してきているような気がする。ここではシラー・シベリカの青とムスカリの白(ボトイオイデス・アルブム)が同時に咲いているので、お互いに引き立てあっている。シダもフウチソウもギボウシも目覚め始めているので、新芽がとても綺麗だ。

 (←クマガイソウ、↓白のムスカリと青のシラー・シベリカ、→手前のフウチソウとシダ)

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実際に花壇に植栽すると、どうしても穴があいてしまう。穴が開くとうちでは野良猫ちゃんが来てしまうので、悩みの種だった。今回はどんな植物が組み合わされているのか、穴があくほど観察する事にした。

 

ここでは春はわざと地肌を見せている気がする。その方が春らしい景色だし、これから夏に育つ植物達の「余白」も要るのでいいのだが、うちの花壇に置き換えると悩ましい。狭く細長いので、大型のアジュガやツルニチニチソウなどのグランドカバーも使えない。悩みながらも、念願のブルーベルの群生を見て喜ぶ。これも、もちろんリストに加える。

 

(澄んだ青のカーペットはブルーベル、黄色は日本タンポポと思われる、イギリスと日本の野原の共演♪)

 

 

 

 

 

 

 

 

 (←青のアジュガと白のクリスマスローズ、↓ギボウシ、→まだ見晴らしのいい黄金アカシアのアーチ)

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黄金アカシアのアーチをくぐって、グラバルガーデンへ。日当りのいい場所の植栽が見られる。遅咲きチューリップのバタリニーの群生が綺麗だ。ここでも組み合わせを入念にチェックする。南の三角花壇に敷いている石の色をもっと茶系にする事を即決する。

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橋の上ではもうモッコウバラが咲いていた。橋の下のスノーフレークも健在だ。橋の向こう岸に植栽されているチューリップのライラックワンダーは少し色が褪せていたが、見事な群生だった。来年のライラックワンダーの増量を決定する。

 

 (→バラが満開になると橋が黄一色に染まる)

 

 

 

 

ローズガーデンに入ると、遅咲きのタルダが迎えてくれた。背が低いチューリップなので、どう使ったらいいのか迷っていたが、なるほど、他の品種と混ぜず、単種で群生させるもいいなと感心する。それぞれのガーデン毎にチューリップやムスカリ、スイセンの品種を分けている。ガーデナーの狭い花壇でも一応のテーマ分けをしているので、球根もなんとなく混植するのではなく、メリハリを効かせた方がいいかもしれない。ここのバラの育ち具合をチェックし、うちの子の成長が特別遅い訳でもない事を確認して、とりあえず安心する。

(←タルダ、↓ピンクはライラックワンダー、→マーガレット’チェルシーガール’)

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昼食をはさんで、グラスガーデンへ。ここでも例のスイセン・ジョンキルの御陰で香しい。相棒maruも「このスイセンいいなあ」とすっかり虜になっていた。これで大幅増量を計画する「球根予算」も確保である。青の濃淡を持つムスカリ(ラティフォリウム)は黄色のスイセン・バルボコデュームとペアで植栽されている。うちの狭小花壇ではラティフォリウムだけがやたら出て来たのだが、やはりもう少し黄色のスイセンを増やして合わせる事にしよう。

←手前はスイセン・ジョンキル、→青のムスカリと黄色のバルボコデューム)

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庭園は広い場所を効果的に見せる植栽がされているので、なかなか狭い花壇にそのまま応用できないが、組み合わせは大いに参考になる。放置せず、植えた後にまめに間引きしたり、株分けしたりして、幅が広がらないように管理していく事にしよう。

 

誤算だらけで、迷っていたガーデナーだが、原点に立ち戻って、再び花壇の計画をし直す元気が出て来たのだった。

 

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(←モッコウバラ、→ピンク色も欲しい、イカリソウ)

 

(撮影:4/20)


冬の前に [Seasons]

寝込む前の週末に、例の宝塚"Seasons"(シーズンズ)に行ってました。気温がぐっと下がり、午前中は雨まじりの天気でしたが、他の週末は予定がつまっていたので強行しました。今思えば、それがいけなかったのかもしれないのですが、、、。と言う事で、ちょっぴり古いその時の記事です。

*****11/12の話*****
悲しいけれども認めよう。もう冬がそこまで来ている。楓はまだ青々と踏ん張っていたりもするが、落葉樹が次々に彩られて行く。花屋はビオラ、パンジー、シクラメンにクリスマス・ローズぐらいしか売れる苗がない。今から庭にやって来るのは、花一杯の季節ではなく、みすぼらしいカサカサした茶色い沈黙だけなのだ。

いやいや、そんなに悲観的にならなくてもいいじゃないか。何かあるはずだ、きっと何かが、あそこなら…。と言うことで、またまたやって来た宝塚の"Seasons"。
http://www.gardenfields.jp/seasons_route.htm

週末はグッと冷え込み、サルビアも見頃を終えたせいか、庭には人もあまりいなかった。庭が急に広くなったかのようだ。勢いのあったグラス達も収束し、青々とした色彩はオレンジがかって来ている。今まで花しか見ていなかったので、ほとんど足元しか目が行っていなかった事に気付いた。今回は樹木や庭を構成している道やアーチがよく見渡せる。庭の肉にあたる草花が痩せたので、骨格が露になったと言うことだろう。今回はこの骨格部分を中心に見て行く事にした。

順路の最初にあるウッドランドは森をイメージした植栽エリアなので、樹木が集中している。この時期のお気に入りはイチゴノキ。可愛らしい小さなベル状の白い花と赤い実が同時に楽しめる。クリスマス用の飾り付けをちゃんとしてくれているのだ。足元のギボウシは黄変しているが、ニューサイランが骨として残るので、形がくずれた印象はない。

枯れ姿のアナベルに、ウインターベリーの赤い実が季節感を醸し出す(写真右上)。樹木は花も実も鑑賞でき、落葉樹なら紅葉も楽しめるのだと言う当たり前の事に、今更ながら感動するのだった。フウチソウだって、紅葉を楽しめる。横のイロハモミジは枝までがオレンジに染まり、周りの緑に映えて一層美しさを増して見えた。

(写真三分割:左から、ハナズオウとヤツデ、フウチソウ、イロハモミジ)

隣のハーブガーデンでは、サルビアの花達が終わりを告げていた。ハーブ類だけの植栽だと、葉が細かいものが多いので、形が取りにくいそうだ。ここではニューサイランや、ツゲ、オリーブなどの生け垣、様々なつる植物が絡まるアーチで、形がしっかり構成されている。学び舎だったサマーハウスや、テーブルコーナーもいいアクセントになっている。

(写真三分割:左から、テーブルの上にあった花梨、サマーハウスの屋根の植栽、ミニトマト)

ウインターガーデン付近に戻ると、ツワブキが日陰の中から足元を照らし出していた。マホニア・チャリティーの花芽もあがって来ていた。(左から、ツワブキ、マホニア・チャリティーの花芽、シモツケの紅葉)

人のいない黄金アカシアのアーチをくぐる。池の周りを散策せず、ここから橋を渡り、ローズガーデンに行く。ローズヒップが一層赤みを増し、足元ではサフランの薄紫の花が目覚め始めていた。この時期、ここからグラスガーデンに至るあちこちで、サフランのカーペットが広がって行く事だろう。これだけあれば、収穫して、サフラン・ライスぐらいは楽しめるのだろうか?

(写真三分割:左から、サフラン、イングリッシュ・ローズ’モリニュー’、秋明菊)

この辺りは、過去にも植物の育ちがよくないとかで、植栽を入れ替えたりした事がある。ローズガーデンのもうひとつの「部屋」は様変わりしていた。みーさんの記事で、先月半ばに植え替えを始めていた事を知らなければ、もっと驚いたかもしれない。シャポー・ド・ナポレオンやつるバラ以外のバラは忽然と姿を消していて、苗が初々しく土の上に突き刺さっていた。一体どうなるのか、ちょっと楽しみである。

グラスガーデンでは、パニカムを始めとするグラス類がいい具合に枯れて、風にそよいでいた。合間にサフランやハマギクが顔をのぞかせる。黄色い花が目立つ様になった。ユリオプシス・デージーに、隣接する中華レストランの建物の壁に誘引してあるコバノセンナが満開だ。寒くなる時期の黄色い花は、ばっと心を明るくしてくれるキャンドル効果があるような気がした。(写真上段:フジバカマとパニカム、コバノセンナ)

(写真下段:左から、ユリオプシス・デージー、ハマギク、レモンマリー・ゴールド)

花は確実に少なくなって来ているが、骨格部分がしっかりしていると、別にみすばらしく見えたりはしない。ああ、「花園」にはそれがないから、この時期に急に寂しくなってしまうんだろうな。これからは自分の庭を厳しい目で見て行く時期だと恩師も言っていた。それはわかっているんだけど、あの忌まわしい薮蚊はいなくなる代わりに、気温と風がガーデナーのやる気を少しずつくじいていくんだよな。ガーデナーは暖かい室内がことの他恋しくなる感覚をなんとなく思い出していた。


(写真左:多分トリカブト、右:サルビアとススキ)

*****参考ページ*****
みーさんの記事はこちら。
10月分→http://mie0123.blog44.fc2.com/blog-date-20061107.html
11月分→http://mie0123.blog44.fc2.com/blog-date-20061123.html


ローズガーデンとグラス [Seasons]

今週はきつかったですx x更新もすっかり遅くなりましたが、前回の記事の続きをご覧下さい。

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ローズガーデンに入ると、春につるバラの芳香で溢れていた空間には、同じくグラスがそよいでいた。とは言え、ローズガーデンなので、他とは一味違う。壁面には一季咲きのバラの実(ヒップ)が赤みを帯びてきていた(写真左)。ひときわ目を引くのは青紫のサルビア・インディゴスパイア(右)。本当にサルビアは種類が多くて驚く。おまけに別名がラベンダーセージと二つのハーブが合体した名前なので、ややこしい事極まりない。お気に入りのチェリーセージだって、正式名はサルビア・ミクロフィラと言う。少し調べてみたら、一般的なコモン・セージは学名だとSalvia officinalisサルビア・オフィキナリス(薬効サルビアの意)で、サルビアの一種と言う事がわかった。これ以上は覚えられそうにないので、サルビアまめ知識はここまでにしておく。

秋のローズガーデンが好きなのは、ヒップだけでなく、このフワフワ感だろうか。さあっーとベールがかかったように、バラの花が少なくなった穴を埋めて行くのだ。フワフワ感はどこから来るのか観察してみた。まずはチカラシバ(写真左)、そして紫色で大型のペニセタム・ルブラム(中央)。サルビアともう一つ薄青のロシアンセージ(右)。ここの庭で見て欲しいと思い「花園」に植えてみたが、陽当たりが悪くうまく行かなかった。秋口にさっと青のカーテンが夏の疲れた草花を覆い隠していく。

蝶がフワフワと舞う様なガウラ。そしてパニカムがその頂に穂をきらめかせる。パニカムはキビの仲間。良く似たのが河原で群生して風になびいているのを見かける。その河原沿いを車で通ってから、園芸店に行くと「パニカム・ショコラーテ」なんて洒落た名前で、しかも結構なお値段でそびえているので、ちょっとびっくりする。もちろん園芸種なので、色も穂も上品で洒落ていた。(写真左:パニカムとロシアンセージ、右:メアリーローズ)

そうしたフワフワ感を締めているのが、要所要所に配置されているニューサイラン、ネグンドカエデ’フランミンゴ’やスモークツリー(コティヌス・グレース)などの樹木(写真右)。そして、足元はコレオプシスの黄色の花と、ユーパトリウム・ルゴーサム(左)の白や薄紫の花が埋め尽くす。咲いているバラは少なくても、充分見応えのあるローズガーデンである。

最近勉強を始めたクレマチス。色んな系統があるけど、こういうのをテキセンシス系と言うのだろうか(写真左)。ちなみにクレマチスももうすぐベランダの仲間入りをする事になっている。この品種ではないけれど、この色に形はまた魅力的だなとスカウティング・リストが更に長くなる。シュウメイギクもやはりこうやって紅白植えたいものだ(右)。白花獲得はこれを見た瞬間、もう決定事項となる。

そこを抜けると、視界の広がるメドーガーデン(写真左上)。夏までフェザーグラスが支配していた所はフジバカマがそびえる。遠くの黄色はオミナエシである。そして奥にはパンパスグラス、手前にはパニカム、パニカム、パニカム(左下)。もうあちこち繁茂しているので、名札も行方不明だ。一つ確認できた品種はパニカム・プレリースカイ。背が高いが手前に植えても、奥のサルビアが透けて綺麗に見える。ちょうど花束にカスミソウを添える感じだろうか(写真右上)。オミナエシもそうだ。向こう側が透けて見えるので、わざと手前に植えたりするそうだ。それにしても漂う臭気。うーん。色も形もいいのに、臭いだけが残念だ(写真右下)。

さすがにイネ科大好きな恩師のデザインだけあって、グラスの扱いが素晴らしい。講座でもイネ科植物を説明する時にはいつも以上に熱がこもるが、「このミスカンサス・シルバークラインが、、、」と説明を始めても、文章をいい終えた試しがない。くしゃみで遮られるからである。そして涙目で「大好きなイネ科なのに、、、」と鼻をすすっていた。イネ科マニアにして、イネ科アレルギー。でも秋が深まれば花粉が飛ばなくなるので、大丈夫なのだそうだ。見た目では全く区別がつかないが、花もつけば種もつける、身近すぎてその良さに気づかなかったグラス類。きっと今度出る本にもグラス類の事が出ているに違いない。本が出るのは「9月の予定ね」なんて、春に聞いたような気もするが、先日ホームページを見たら、来年の2月と書いてあった。ん?まあ、いつまでも待つつもりだけど、早く見てみたいものだ。

ずぶ濡れにはなったが、収穫は大きかった。併設の園芸店で即戦力も獲得し、雨の中、ガーデナーは相棒maruの手も借りながら、意気揚々と引き揚げて行った。さて、どんな有望選手が選抜されただろうか。発表は後日のお楽しみとしておこう。

(ロサ・ムリガニーのヒップ。レンズも曇る雨、雨、雨。)


秋のグラスガーデン [Seasons]

ここの所お天気が続いていて、秋雨前線が近づいているとは夢にも思っていなかった。開園三周年を迎える宝塚ガーデンフィールズ内"Seasons"に行こうと決めた日曜は、朝から雲行きが怪しかった。昨日は夏が戻ったかと思うほどの残暑だったのに、今日はうってかわって20℃前後の快適さである。着いた時には、ポツポツと降り始めた雨が結構本格的に降ってきていた。うーん。とりあえず苗視察から始めよう。

併設する園芸店は充実していて、危険地帯である。今まであまり足を踏み入れなかったのは、一重に植え付け時期に合わなかっただけの事なのだ。今回は来週の「花園」植え付けに向け、最終視察になる。早速球根コーナーで、欲しかったシラー・シベリカとクロッカス・ブルーパールを見つけてしまった。ここは恩師ポールさんの所で売っている球根も手に入るので、ますます始末が悪い。

早速機嫌をよくしたガーデナーは、ガーデンめぐりを雨天決行する事にした。写真はうまく撮れなくても、有望選手獲得のアイディアがてんこ盛りなのは間違いない。

入って一番初めに目に入るウォーターガーデンの周りは、パンパスグラスとタカノハススキがぐるりと取り囲む。秋の”Seasons"の見所は、このグラス類だ。去年も秋に来て、イネ科の植物達の成長ぶりに驚かされたものだった。日本では河原に行けば当たり前に風にそよいでいるイネ科の植物を、こうやって庭に取り入れて季節を感じさせるなんて全く発想が違う。今回は見られなかったが、夕方に光が穂に透けて見えると、一層秋を感じさせる演出になる。ポールさんもこの庭の「秋が一番好きかもね」と言っていたのを思い出す。

春には球根が咲き乱れ、夏はルドベキアが埋め尽くしていた場所は、今はチカラシバが穂を広げ、風を知らせている。すっかり雑草扱いで、草刈りの対象になる子だが、学名はPennisetum alopecuroides ペニセタム・アロペクロイデス。園芸店でもペニセタムの仲間がオーナメンタル・グラスとして結構なお値段で売られているから、学名で聞くとピンと来る人もいるかもしれない。

道ばたに咲いている事も多いが、チカラシバの名の通り、引き抜くのは至難の業なので、穂から種をさりげなく採取してくるのが、スマートでよろしい。これももちろん恩師から教わった奥義である。イネ科植物は穂の色が異なる珍しい品種が、誰にも気づかれず道ばたで咲いている事も多い。イネ科マニアの恩師はそうした品種を見つけては、楽しく種を採取してくるそうだ。

ウッドランド・ガーデンから順路通りに回る。花が終わったルドベキアは花がらを摘まないで、その枯れ姿を楽しむようになっている。その横からヤブランが紫の穂をかかげているのとは対称的だ(写真中央)。ここは紫陽花も花がらを摘まない。「花園」に招集する事になっているアナベルも、ここでは春先に剪定されるまで、花色の変化を楽しむ演出になっている(右)。(順路はこちらから→http://www.gardenfields.jp/seasons_route.htm

コムラサキシキブ(写真中央)や、ヤツデの葉(左)を鑑賞していると、クリスマスローズの葉が勢いを増していた事に気づく。石組みから枝垂れる大好きなフウチソウの横で(右)、白萩が見頃を迎えていた(写真下段)。春夏には気づかないのに、秋になると急に自分の存在を知らせる萩は、是非獲得したいと思っている有望選手だ。

恩師がいつも箱形に切られて可哀想だと嘆いていたアベリアは、もちろんここでは自然樹形のまま、綺麗な花を咲かせている(写真左)。もっと低めに剪定して、グランドカバーの様に使っているエリアもある。そして密かにお気に入りのヒペリカム・エンビーフレア(中央)。オトギリソウの仲間で、小柄な花がいい。そして実は赤く、花が黄色で対照をなしているのが、鑑賞価値大である。まだ苗で見かけた事がないのだが、いつかは「花園」にお迎えしたい。

ここからハーブ・ガーデンへ寄り道。夏の間お疲れ気味だったハーブもサルビアを筆頭に勢いが戻ってきた。ハーブはよく陽当たりのいい所に植えがちだが、関西の夏の暑さにぐったりしてしまう。ベランダの子も半日陰で助かっている気がする。庭植えにする時は、半日陰だと徒長する心配もあるが、夏は日陰になるような所に置いておく方がいいだろうなと思っている。(写真左上:サルビア・レウカンサ、中央:カラミンサ、右上:気に入ったハーブの組み合わせ、左下:カリガネソウ、右下:ジャスミン)

ハーブ・ガーデンを抜け、ウィンター・ガーデンに出るとシュウメイギクとオミナエシがお出迎え。「花園」のシュウメイギクはもうダメなんだろうなと思いながら、今度は白を植えてみようかと相変わらず懲りない考えを抱く。だってやっぱりこれは秋の庭に欲しいではないか。オミナエシが日陰でも育っているのに感心するが、雨なのに、やはり臭気が漂う。この臭いさえなければなといつも思う。(左上:黄色はオミナエシ、中央:シダとギボウシの組み合わせ、右上:クリスマスローズの葉とムスカリの葉、下段:シュウメイギク)

クリスマスローズとムスカリが来春に向けて着々と準備を進めるのを確認しつつ、再び池に出る。グラス達を右に眺めていると、左からは紅白の萩が枝垂れてくる(左上:逆方向から撮る)。その向こうにはフジバカマがこんにちわと顔を出す(右上)。ここもあまり日が差さない所だが、綺麗に咲いている。この光景に、スカウティング・リストの順位は赤丸急上昇する。(写真左下、中央:コバノセンナ、右下:フジバカマのボーダー)

黄金アカシア(ロビニア)のアーチを抜けると、乾燥に強い植物達が迎えるドライ・ガーデン。ここでもススキが存在感たっぷりだ(写真左)。お気に入りのチェリーセージに挨拶する。普通の赤の品種もあるが、特にお気に入りは「ホットリップス」と言う、白地に紅をさした様に、赤味が入る品種だ(右)。

今回は思うように庭らしい写真が撮れていない分、いつもにもまして饒舌すぎたようだ。前編後編の二部構成でお届けする事にした。橋の向こうのローズ・ガーデンは後編に続く。


(左:ローズガーデンを望むが、ススキでもう橋が見えなくなる。右:橋の上から池を眺める。)


夏のSeasons(7/22) [Seasons]

長雨が少し明けると、嘘のような蒸し暑さがやってきた。ガーデナーはどうしても、このうだるような季節の庭園を見てみたかった。春にはだいたいどこの庭園も球根や宿根草が美しく咲き誇り、見応えがあるが、花の盛りが終わると皆、海や山に行ってしまい、日陰のない庭園なぞ見向きもされないような気がするからだ。

実際イギリスと違い、日本の暖地の気候では植物の成長が著しく、宿根草の見頃は短いそうだ。その考察はまたの機会にして、今回は恩師ポール・スミザーさんがデザインした、宝塚ガーデンフィールズにある庭園「Seasons(シーズンズ)」を再度訪れる事にした。(春の様子は、新カテゴリー「Seasons」でまとめてご覧頂けるようになりました!よろしければご利用下さい。)

当初は曇り空だと思い、ゆっくりと出かけたのに、午後から晴れ上がり、園内を歩き回るガーデナーの頭も、いつもにましてぼぉっとしてきた。ピントの合わない画像も多いが、このぼぉっと感が伝われば幸いである。(園内のルートはこちら→http://www.gardenfields.jp/seasons_route.htm

入って目につくのは、中央のウォーターガーデン。睡蓮、蒲、ミソハギ、ポンテデリアなど各種の湿生、水生植物が繁茂して、その池の周りにはチカラシバなどイネ科のグラス達が揺れている。園内にはほとんど人がいない。皆海にも出かけたのだろうか。

順路を進むと、一番目を引く花はルドベキア(写真左上)。大中小とさまざまな品種が群生している。やはり夏にはこういう花が似合うのだなあと思う。その合間に百合やヘメロカリスが顔を出す(写真右上)。ギボウシが潜望鏡を伸ばしている以外は、一面緑で覆われている。最近ガーデナーが注目している西洋紫陽花のアナベル(写真左下)。真っ白な花弁は今は緑に染まり、涼やかさを演出している。森林(ウッドランド・ガーデン)を更に歩き進めると、紫陽花や蛍袋の色が移ろう中、風地草も目立たぬ花穂をつけていた(写真右下)。

そこから開けたハーブガーデンへ出ると、野菜達が実を結んでいる。木でできた可愛い支柱に周りを囲むハーブ達。長雨と蒸し暑さに少し疲れ気味に見える。鑑賞用のブドウもいいなあと思うが、とうもろこしの順調な成長ぶりの方に何故だか期待が膨らむ。

早春に球根が咲き乱れていた所(ウインターガーデン)は、グランドカバーの美しい葉色が地面を埋め尽くす。ムラサキセンダイハギが花を終え、マメ科特有の実を結び、オミナエシが顔を覗かせている。アガパンサスは木陰でも比較的元気だ(写真右)。

もう一度池に出てくると、すでに一汗かいている。カモが睡蓮の合間に優雅に浮いているのが羨ましい。黄金アカシア(ニセアカシア)のアーチをくぐる。ここの木陰のベンチで一休みする事にした。

ここから、モッコウバラの橋の所に出る。タカノハススキなどのグラス達が成長し、橋を渡らないと池の向こう岸が見渡せない。睡蓮はさすがに綺麗だ。

橋を渡って入るローズガーデンの主役は、今はアガパンサス(写真上段、右)。そこにコレオプシス”ムーンビーム”(中段、左)や白いユーパトリウム、ガウラにアザミが花を添える。サマーラベンダーと呼ばれるロシアンセージが、これから青紫のカーテンを広げようとしていた(中段、中央)。ハマナスはまだ白い花を咲かせていたが、朱色の実の方が最盛期を迎えている(中段、右)。

ローズガーデンを抜け、見晴らしのいいメドーガーデンに出てくると、無風状態。ここは風に池の周りのグラス達が揺れて、秋には涼やかな雰囲気を持っている。しかし今はやわらかいフェザーグラスさえも、じりじりとした日差しの中で、ピクリとも動かない。そしてここは園内で一番陽当たりのいい場所である。人はいない。入園して一時間も経っていないと思うが、すっかりガーデナーの体も干上がってしまった。水分補給をしよう。

一旦、園外に出てエアコンの効いたカフェで相棒maruと涼む。ガーデナーは夏の暑さとけだるさをようやく思い出した。炎天下に園内を回るなんて、やはり無謀だったかもしれない。ここの所、暑いと言う感覚をすっかり忘れていた。かなり長く休息を取ってから、まだ回っていなかったメドーガーデンを少しだけ見て帰る事にした。(写真右:背の高い植物でピンクはユーパトリウム、黄色はオミナエシ)

夏の庭園で分かった事は、やはりウォーターガーデンが中心になる事と、木陰が大事だと言う事だった。そして、一時間以上歩き回らない事である。すっかり消耗してしまったガーデナーは、maruが運転する帰りの車の中で、すやすやとシエスタをとっていた。

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記事未掲載のSeasonsの写真はPhotoにアップしました。よかったら遊びに来てください。(新着画像をクリックすると見られます。)
http://pht.so-net.ne.jp/photo/hanahana-life/


Seasons〜バラの季節〜 [Seasons]

今日の予報は、何とも歯切れが悪い。不安定だの、ぐずつくだの、降るのか降らないのか、まったく気象庁もわからないようだ。ベランダに出ると風は強いが、雨はない。ここは強行突破あるのみだ。

ベランダの子達がまだ水を必要としないのを確かめると、すぐにガーデナーは出かける準備をする。降る前に行くなら行ってしまおう。

幸い、雲間から時々お日様の光が漏れてくる。今日の目的地、宝塚ガーデンフィールズ ”Seasons"に着くと、まだ開園5分前だった。今日はどうやら、コンサートなどのイベントがあるらしく、開園直後でも思ったよりは来園者がいる。朝の柔らかい光、と言うより少しどんよりした光の中を、まずは順路通りに回る事にする。

入って左手のウッドランド・ガーデンは、実はガーデナーのお気に入りの場所だ。森をイメージしたデザインで、半日陰に強い各国の品種が自然に植栽されている。ギボウシや、紫陽花(写真↓中央上)が元気だ。ここには、いつも知らなかった植物出会えるので、毎回驚きがある。フウチソウに柏葉アジサイ(右上)も顔を見せ始めた。上を見るとカルミア(左下)もある。角を曲がるとカラーボーダーの所に、白い風露草(中央下)を見つける。これを「花園」のオステオスペルマムの後釜として迎えようか。今まで知らなかったが、ホウノキ(右下)まであった。なんとなく甘い香りが漂う。

左にはフォーマル・ハーブ・ガーデンがある。講座を受けるサマーハウスもここにある。ラベンダーが咲いている(写真左の紫色、手前はテイカカズラ)。低い生け垣の中に、渋い植栽がしてある(中央)。野菜もハーブと一緒に植栽されて、こうやって庭に取り入れると素敵だろうなとお手本になる所だ(右)。

またウッドランド・ガーデンに戻り、好きな植栽をじっくり堪能していく。好きだなと思った所は、写真に撮って、どこがいいのか後で分析すると勉強になると、恩師に教わったのを思い出す。

黄金アカシアのアーチをくぐると、チャペルの遺跡の所に出る。ここは乾燥に強い植物達が植栽されている。壁にはボピー・ジェームスが満開(左)。モッコウバラの橋を渡ると、いよいよ今日のメイン・ディッシュ、シークレット・ローズ・ガーデンだ。(中央:チェリーセージ、右:ニゲラ)

橋を渡ると漂う芳香も味わいながら、ここはしばらく黙って堪能しよう。

去年はバラの育ちが悪いと言う事で、全面にやり変えていた所だが、見事な植栽だ。バラを庭に取り入れる時は、つるバラで量感を出すといいと恩師は言っていた。そして手間のかからない丈夫な品種を選定する。そうした理由で、ここはイングリッシュ・ローズが多く植栽されている。また一季咲きと言って、春しか咲かない品種も多い。一季咲きは、花がより一層美しく咲き、秋には実をつける。たとえ病気になって、葉を落としても、翌年また綺麗に咲いてくれる。四季咲きより手間がかからないのだ。本物のガーデナーさんによると、今年は花がらを摘まず、ちゃんと秋にローズヒップを見せる事にしているそうだ。

木立ちバラと植栽されている植物は、バラと形や高さの異なる物が使われている。ハーブも多用されて、シモツケやアベリアの低木、ニューサイランやイネ科のオーナメンタルグラスもうまく組み合わされている。フウロソウやユーフォルビア、秋に花が咲くロシアンセージもある。樹木は西洋カエデとスモークツリー。それ以外に、フォーカルポイントとしてのアーチやベンチを使って、平面的になりがちなローズガーデンを立体的に演出している。一季咲きのバラの近くには、秋に活躍する植物がうまく使われている。

ここの良さは、バラの品種が全く気にならない所だ。それだけ、うまく周りと調和が取れていて、バラだけが孤立することがないからだと思う。拙いガーデナーの説明と写真だけでは、到底ここのバラの季節の素晴らしさは伝えきれない。この秋に、一番庭を作って美しいと言われる三年目を迎える。見ておいて損はない庭だ。

また来月も見に来なければと思い、ガーデナーは名残惜しく、メモリーカード一杯のカメラを手に、Seasonsを後にした。

****おまけ:そんな事言っても、バラの品種が気になるあなたへ****
(バラの写真:左から順に)(1)アーチのピンク:コンプリカータ(2)手前の白はハマナス、奥ピンクはロサ・ガリカ・ベルシコロール(3)ロサ・ムリガニー、英国シシングハースト・キャッスル・ガーデンより寄贈された。秋のローズヒップ(実)が美しい(4)ベンチ奥、コンスタンス・スプライ、イングリッシュ・ローズ(ER)第一号(5)アーチ手前の白、アルベリック・バルビエ(6)奥の白は、ロサ・ムリガニー(7)白はフランシス・E・レスター(8)ピンクはシャポー・ドゥ・ナポレオン、蕾がナポレオンの帽子に似る事から(9)手前白はボピー・ジェームス
(最後の二枚)左:アルバータイン、右:ブラッシュ・ランブラー


再会 [Seasons]

金曜日の留守中に、一本の電話があった。
「キャンセルが出ましたので、明日講座にお越し頂けるようになりました。」

ガーデナーは一週間前に、思い出したように宝塚ガーデンフィールズにガーデニング講座の申し込みをしていた。去年受講してた時は少人数でこじんまりとしていたが、今年は大人気らしい。すでに三人のキャンセル待ちと言われた時点で、諦めていた。

しかし雨の予報が幸いしたのか、前日に急遽行ける事になった。朝9時半からの開始と早いのだが、喜びいさんで出かける。心配した天気も、どうやら晴れそうだ。

まだ開園前のシーズンズ"Seasons"。http://www.gardenfields.jp/seasons_route.htm講義のあるサマーハウスではなく、真っ先に向かったのは、シークレット・ローズ・ガーデン。誰もいないうちに写真を撮ろうと足を踏み入れると、もう誰かがしゃがんで一眼レフカメラを構えている。びっくりしてると、立ち上がった人に見覚えがあった。約半年ぶりに再会する恩師、ポール・スミザーさんだった。

一言二言挨拶をかわす。「今年は雨ばかりだからね、皆遅いね」と恩師。確かに去年の今頃と比べると、まだバラは満開とまではいかない。見頃は来週ぐらいだろうか。

さて、今日の講座内容はつる植物の仕立てについて。去年ご一緒した人達との再会を喜ぶ。それにしても、すごい人数。今年の講座は満員御礼だ。

森の木の話から、植物の芽を出す習性に話が及び、つる植物や木を仕立てる際は、横に倒す事が重要だという今日の本題にに移っていく。その講義が飽きないのは、ポールさんの茶目っけたっぷりな語り口が、スパイスのように効いているからだ。

「芽の先端に部長がいてね、この部長がいなくなったら、あとの主任とか課長とか、今まで楽してた人達が頑張らないといけなくなるから」、成長点である先端の芽がなくなると、脇芽が伸びてくるのだ。木をエスパリエと言って、壁に仕立てる時もこの特性を活かす。

一通り講義が終わると、ガーデンウォーク。実際の庭を見ながら、ポールさんが解説していく。幸い、晴れ間も見えて暑いぐらいだ。サマーハウスを出てすぐに満開のテイカカズラ。ほのかに甘い香りが漂う。

ここで懸案の成長の悪いテイカカズラ(写真上段左)について、早速聞いてみる。最初は根を大きくするとよいとの事。そのうち伸びてきた元気そうな枝を、麻ひもでくくり誘引する。テイカカズラは巻き付いて伸びて行く事もできるし、気根も出るので勝手にくっついて伸びてもいく。万遍なく花が欲しい場合は、できるだけ遠回りさせて誘引することが大切だそうだ。

ジャスミン(写真↑下段中央)、ブラックベリーのつる植物と回り、低木のフイリタニウツギ(写真左)もつるのように仕立てられるという話に移る。トサミズキもエスパリエに向いているそうだ。そして、テレビでも紹介されている黄金アカシアのアーチ(写真中、右)。短い枝を冬に切り戻す。またワイヤーの10cm下ぐらいで切ると、枝が2本出てくるので、すぐ上のワイヤーに誘引しやすいそうだ。夏咲きのクレマチスも冬に切り戻すので、一緒に植栽すると相性がいいそうだ。

そしてつるバラの話。壁にドリルで穴を開け、ねじを打ち込み、ワイヤーを通している事の紹介。トレリスはすぐ腐ってしまったりするので、一番ワイヤーがいいそうだ。でもさすがに「花園」でやる訳にはいかない。つるの仕立てと同じ原理を使う、ベギング・ダウンpegging downの紹介。ロサ・ガリカ・ベルシコロールの枝を倒して、地面に立てた杭に結びつける方法だ(写真左)。倒した枝の側面から新芽が上がるので、花付きがよくなる。通常の木立に剪定するよりも、4倍の花がつくそうだ。倒れてきやすいシャポー・ドゥ・ナポレオンも、支柱に巻き付ける形で仕立てられている(写真右)。

面白かったのは、イチジクのエスパリエ。イギリスでは気候の関係で、日本の様に放っておいては果実がならない。壁に仕立てて、壁の余熱を利用し、果実を栽培するこのエスパリエという手法が発達したのだそうだ。場所をとらなくて済むので、狭い庭には有効だ。

ガーデンウォークが終わり、サマーハウスに戻り、質問の時間があって、めでたく講座は終了。この後午後からも、庭の手入れでポールさんは残るので、見かけたらまた質問して下さいとの事だった。ポールさんと写真を撮ったり、世間話をして、いったん解散する。

相棒maruがもう庭園に到着していて、写真を撮っていた。一緒に美味しい中華料理を食べ、午後に庭園に再入場する。風は強いが、久々に見る青空だ。

ローズ・ガーデンを撮ろうと思い向かうが、途中で傘を忘れた事に気づき、maruと分かれ、サマーハウスに向かう。その帰りに黄金アカシアのアーチをくぐると、本物のガーデナーさん達に指示をしているポールさんに会う。そうだ、ひとつ聞き忘れていた事がある。「ポールさん、本はいつ出るんですか?」

周りのスタッフ共々、一瞬の沈黙。どうも禁断の質問だったらしい。一生懸命経緯を説明してくれるポールさん。要約すると、出版社の講談社と侃々諤々話し合った結果、構成を変えてやり直しているので、現在の所、「9月の予定ね。9月じゃなくてね。9月の予定で。」と言う、また茶目っ気たっぷりのお返事だった。

その後園内をぶらぶらと写真を撮っていたガーデナー。もうメモリカードが一杯になった時にスタッフの方が、声をかけて来られた。川の所で砂利を入れる作業しているので、よろしくければ手伝って頂けませんかとのお誘い。よく講座のあと、ポールさんが作業をしている時に受講生が手伝ったりする事がある。あと30分ぐらいでもよければ、とガーデナーは快諾して、早速作業場へ。

ポールさんの要望は、池に流れる川に、砂利を敷いて、自然に水を濾過しようと言うものだった。岩や流木もあるが、自然な川のように配置していく。長靴を借りて、本物のガーデナーさん達と作業するガーデナー。結構子供時代に川で遊んだように楽しい。たまにこうして手伝うのは楽しめるが、職業にするのは大変だなと思う瞬間でもある。

この機会に色んな質問をスタッフさんにしてみたりする。「年間パスはないんですか?」どうせ月一回は来るつもりなので、と言うと、今は計画だけでまだないとの事。このやりとりを聞いていたポールさんがすかさず「そんな事言ってたら、ここのスタッフになっちゃうぞ。」と合いの手を入れる。

楽しく作業しているうちに、そろそろ相棒と約束していた時間になった。まだ作業を続けているスタッフの方とポールさんに別れを告げる。「9月に本が出たら、買いますからね。」「そうそう、僕が老後、楽をするためにね。」苦笑いをするポールさん。

久々の楽しい時間に、例の植栽で悩んでいたガーデナーも前向きになる。帰ったら、講義メモと写真を振り返ろう。そして、また近いうちにバラを見にこようと、ガーデナーは計画を練り始めた。


Seasons(5/3) [Seasons]

一ヶ月に一度は、恩師の庭に行こうと思いつつ、もう五月。前回に宝塚ガーデンフィールズにあるSeasons(シーズンズ)を訪れたのは、春分の日だった。今はもう春咲き球根が終わりを告げ、新緑が眩しくなる頃だ。そしてバラの季節の先駆けとなる、モッコウバラのブリッジが見頃のはずだ。

連休五日目はベランダ改造が終わり、その勢いで早速行く事にした。しかし、本人の勢いとは裏腹に車は進まない。普通なら一時間もかからないのだが、四時間以上もかかってしまった。連休はやはり公共交通機関を利用すべきだ。ガーデナーは途中からでも、電車に乗ろうと提案したが、相棒は聞き入れなかった。待つのが嫌いなmaruが、これだけ我慢したのは、ひとえにあのモッコウバラを撮りたいからなのだろう。その執念には脱帽する。

着いてから、天ぷら定食を急いで食べ、庭園内へ。前回とうってかわって、庭園内は新緑に包まれる。人出も多いが、気になるほどでもない。入ってすぐ左手の順路を歩く。ここは日陰に強い品種が植栽されている、森林のコーナーだ(ウッドランド・ガーデン)。散歩がてら来る人も多いのか、皆割と早足で通り過ぎる。

〜貴方達の足元には、イカリソウもナルコユリも咲いているし、フウチソウもこんなに輝いているんですよ〜
と、ガーデナーが言った所で、どうしようもない。庭の楽しみ方は人それぞれだ。

(左から)イカリソウ、ナルコユリ、フウチソウ

球根シラー・シベリカが咲き乱れていた所は、シロバナサキゴケやアジュガのカーペットに覆われ始めていた。落葉低木が目覚めている。カシワバアジサイにウツギ類達。クレマチスもひっそり咲いていた。

(上段、左から)アジュガ、落葉低木のウツギ類、クレマチス’モンタナ・スノーフレーク’
(下段、左から)落葉低木に止まるトンボ、エニシダ、リョウメンシダ

森林を抜けて、再び池の周りに出ると、今度は黄金アカシア(ニセアカシア)のアーチをくぐる。黄緑の黄金アカシアの新葉に、紫のクレマチスが美しい。

(左から)クレマチス、アーチ内からの眺め、原種チューリップ・バタリニー’ブロンズ・チャーム’

そしてバラの庭の入り口。ここの前には橋が架かっている。満開のモッコウバラが橋を覆いつくし、訪れた人を奥へと誘う。橋のたもとには、恩師がテームズ川の自生地をイメージしたという、スノーフレークの群生。しかしもう盛りは過ぎていた。橋の先のバラの庭が、その芳香で全ての人を魅了するまで、あともう少しだ。

香りがしないと言われるモッコウバラだが、これだけあると、ハチミツとライムと新緑が混ざったような、爽やかな香りがかすかにする。

橋を渡って、バラの庭園を抜けると、見晴らしのいい草原になる(メドー・ガーデン)。前回には一面クロッカスとスイセンしかなかった所は、フェザーグラスが優しく風にたなびいている。所々に立つユーフォルビアのきりりとした姿と対照をなしている。

何度回っても発見があり、飽きのこない庭だ。アイスティーで休憩をし、また一周してから庭園を出た。園芸店も併設されているので、実生苗用のボットや浅い鉢を購入し、帰途についた。

帰りは高速道路も使ったせいか、40分しかかからなかった。行きと帰りが反対ではなくて、つくづくよかったなと思う。宝塚に行って唯一困った事と言えば、ガーデナーの欲しい品種リストが、また一段と長くなってしまった事だった。

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モッコウバラ:学名Rosa banksiae lutea 中国中南部原産。学名は、イギリス植物学者バンクス氏の妻に捧げられた事から。 原種バラ。


恩師 [Seasons]

「少しぐらい失敗しても大丈夫。植物は大概の事は許してくれるからね。」
〜恩師Paulさんの言葉より〜

ガーデナーは物事を始める順序がいつも間違っている。カメラをしよう、そうだ、デジタル一眼レフだ。花を育てよう、まずオールドローズだ。ガーデニングを始めよう、まずガーデン・デザインの勉強だ、、、。始める時はただ単純に純粋にそうしようと思って始めるのだが、しばらくして物事の順序から大きく逸脱している事に気づく。いつもそうだ。

ガーデニングを始めるにあたっても、まずガーデン・デザインやプラン作りの本を買ってきて、妄想にふけっていた。でも今ひとつ気に入らない。何もわかっていないくせに、好みだけは一人前にはっきりしていて本当にタチが悪い。その中でふとある庭の写真に目が止まった。

((あった、これだ。))八ヶ岳のナチュラリスティック・ガーデンと題されたその写真こそが、恩師Paulさんことポール・スミザー氏デザインの庭だった。

デザイン・コンセプトの説明を読んでますます気に入る。
「その地域の自然風景に溶け込む」、「自然の中に育つ野生の草花との共生」、「周りの環境と相談しながら年月をかけて作り込む庭」、「手間をかけずに」「その地域にあった丈夫な多年草や球根や樹木を選び、、、」、「原種チューリップ、、、、毎年植え替えなくてもよい、、、ランダムに植えると自然に見える」

早速ネット検索をし、「有限会社ガーデンルームス」のページを見つける。そして同氏の私庭がある八ヶ岳で、講座を実施している事を知る。((八ヶ岳は遠いなあ、、、))一挙に膨らんだ希望は、しなしなとしぼんだ。

それからしばらくたったある日。ガーデナーは、移動中の電車の暇つぶしにたまたま手にした新聞仕立てのチラシを読んでいた。沿線の花の見所などが書いてある。ふと「ポール・スミザー、講座」の文字が目に飛び込む。ホームページで見た講座を、宝塚ガーデンフィールズ「Seasons」で開講するというのだ。((あの庭もこの人だったんだ))驚きと喜び。申し込もうかと思うが、ふと不安がよぎる。((初心者なんだけど、、、))あまりの嬉しさに忘れていたが、その時に初めてガーデナーは、自分が全く知識のないずぶの素人である現実に気づいた。

珍しく躊躇したあと、電話で問い合わせる。「初心者なんですけど、ついていけるんでしょうか?」考えてみれば、受講資格もないので、先方が断る訳もない。受講料だけ支払えば、手続きは済み、めでたく講座の初日を迎える。

外見は少し頑固そうな庭師を彷彿とさせるイギリス人のPaulさんは、話してみると日本語のうまい、とても気さくでユーモアあふれる楽しい人だった。茶目っ気たっぷりな語り口で、わかりやすく植物や植栽の仕方を自らの体験談をまじえながら解説して下さった。植物の名前を学名でおっしゃるので、最初のうちは聞き取りに苦労はした。でも慣れるにつれ、学名が唯一その植物を特定する世界共通の名前で、重要である事を知る。

品種を特定するには英語の学名が唯一の手がかりだ。カタカナだけだと読み方や表記の仕方の違いで、混同してしまう。さすがに学名の暗記はあきらめたが、園芸店で買う時に苗についてあるラベルを見て、本当に欲しい品種かどうかを調べるのには役立つ。店によっては名前の間違った手書きの札を立てて、平気で売っている事もある。

その講座で学んだ事は、先輩ガーデナーでも目から鱗が落ちることばかりだった。イギリスのガーデニング文化の歴史と日本の園芸文化との大きな違いを肌で感じた。(*園芸とガーデニングとの違いについては、いむらさんがブログで説明されていますので、省きます。参照→http://blog.so-net.ne.jp/rimura2/2005-09-01

歴史をかいつまむと、他のヨーロッパ諸国が貴族中心の庭園文化を築いたのに対し、イギリスでは近代にジェントリーgentryという貴族とは異なる中産階級の富裕層が育ち、そのジェントリーが庭園を作っていく。それが現在のイングリッシュ・ガーデンの原型を築き、やがて庶民にも広まりガーデニング文化が大きく花開く。

日本でも、樹木と石組みを中心とした庭園は特権階級のもので、専門の庭師がその造園技術を磨き、庶民は鉢植えを中心に草花を育て、園芸文化へと発展していく。日本の庭師は、世界でもすぐれた樹木の剪定技術を持つが草花の専門知識を持たず、その一方で、園芸家は庭園を作らず、丹念に特定の植物を美しく育て上げる栽培技術を持つようになる。ついぞ日本には、両者(造園と園芸)にまたがるクロスボーダー的な領域、gardening(ガーデニング)という概念は育ってこなかった。概念がない所に固有の言葉はない。gardeningはガーデニングなのである。

ガーデニング大国、イギリスの庭園にはその昔プラントハンター(植物採集家)達が収集した、日本の植物が多用されている。Paulさんは、日本にあるいわゆる英国風庭園には外国植物ばかり使われている事を嘆いておられた。イギリス人のPaulさんからは、日本人が忘れていた、日本に合う植物を使った、日本人が目指すべきガーデニングを教わった気がする。

ただ実践するのはとても難しい。恩師に習った事を思い出しながら、ガーデナーはつくづくそれを実感している。


3月に訪れた時のSeasons  球根が目立っていたが、夏にはイネ科植物が中心のグラスガーデンに様変わりする。



















Seasons続き [Seasons]

写真が入りきらなかったので、引き続き、宝塚ガーデンフィールズ内"Seasons"をガーデナー目線でご紹介。

花盛りのヘレボラス・オリエンタリス(クリスマスローズ)他にも様々な花色が咲き乱れていた。

視線の先は池の周りの球根たち

 低木とスイセンとクロッカスの組み合わせ

 球根オーニソガラムとシモツケ・ゴールドフレームの芽吹き

春を迎え、景色は刻々と変わっていく。ガーデナーは春のまぶしさを堪能した。

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学名:ヘレボラス・オリエンタリス Helleborus orientalis (キンポウゲ科)英名:Lenten Rose 四旬節Lent(復活祭前の40日間)の頃に開花 *「宿根草花」p90
学名:クロッカス”ブルーパール” Crocus chrysanthus "Blue Pearl" (アヤメ科)ギリシャ、アルバニア、トルコの森林、草地に自生 *「球根草花」p117
学名:クロッカス”リメンブランス” Crocus vemus(L.)J. Hill "Remembrance"西ロシア、ポーランド、ルーマニア原産
スイセン ”テータテート” 学名:Narcissus "Tete-a-Tete"(ヒガンバナ科) 小型品種で早咲き。原種キクラミネウスの性質をもち、花弁が後ろに反転*「球根草花」p118
学名:オーニソガラム・バランサエ Ornithogalim. balansae (ユリ科) 小型品種。トルコ、バルカン半島原産 *「球根草花」p116
シモツケ 学名:Spiraea japonica "Goldflame"(バラ科) *「庭木入門」p108


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